聖ホセマリアの生涯-33

リアルプの森で5日間待機した後、11月28日の日没に行軍が始まりました。夜間に行進し、昼間は家畜小屋などで隠れて過ごします。5日間、標高差600メートル前後の山道を上り下りしました。

過去の記事はこちらから

リアルプの森で5日間待機した後、11月28日の日没に行軍が始まりました。ある洞窟に到着すると一人の若者が現れました。名前はアントニオだと言い、皆に向かって「俺が隊長だ。一列になって歩く。話さない。指令は先頭の奴に言う。それを前から後ろに伝える。誰かが列から離れたり歩けなくなったりしたら、そこに置いておく」と言いました。グループの人数は20人あまり。行進が再開され夜明け前に切り立った崖の下に着きました。日曜日でした。聖ホセマリアはそこで岩を祭壇にしてミサを立てました。前年の7月からミサに参加した者は誰もいませんでした。ある若者が日記にこう書いています。「この旅で最も感動的なことが起こった。ミサだ。・・今日のようなミサを見たことがない。極限状態だったからか、司祭が聖人だからか、僕には分からない」。

夜間に行進し、昼間は家畜小屋などで隠れて過ごします。5日間、標高差600メートル前後の山道を上り下りしました。斜面を滑ったり転んだり、谷川では靴が水浸しに。手は草木の棘で傷だらけに。突然隊長が消える。安全を確かめに行くのですが、その間は木々の影にじっと隠れておかねばなりません。疲労と寒さと空腹のため動けなくなる者も出てきました。まず、トマス・アルビラが倒れ一歩も動けなくなりました。隊長は先に進もうとします。しかし、聖ホセマリアがなんとか説得し、トマスを助けました。別の日には神父自身が。このときは若いメンバーが彼を担いで行進しました。

彼らは、神父がほとんど眠らず祈っていることに気づきました。また、神父は時々配られる元気づけの砂糖入りのブドウ酒や食べ物や、休息の時の毛布を周りに譲るのです。神父が最後まで歩き続けることができたのは信じがたいことだと言えます。

国境を目前にした谷間では警備隊が近くを過ぎ去るのを見て川を渡ります。12月2日の夜明け前、前進の号令が聞こえました。沈黙の内に30人(途中で数人の密輸業者が加わった)が進みます。後ろで警備隊の銃声が響きました。しかし、もうそこはアンドラでした。隊長とその仲間がたき火で暖まっており、一行を見て食事に招きました。そこでアントニオは自分の本当の名前はジョゼップ・シエラだと言いました。

尾崎明夫