『私たちの一滴』

9月下旬、25人の若者がボランティアとして岩手県大船渡市に赴き、そこで経験したことを動画にまとめている。

 東北の被災地復興のために自分たちにできることを少しでもやりたいという願いから、2011年9月17日から24日にかけて、高校生と大学生を中心にボランティア・ワークキャンプをおこないました。

このワークキャンプは長崎の精道三川台高等学校、そして芦屋のセイドー文化センター国際男子学生会館と京都の吉田学生センターという学生寮が主催したものです。

企画や運営、現地との諸連絡など、すべて寮生や学生たちが主体的に進めていきました。その結果、25名の参加者が、長崎、神戸、大阪、京都、名古屋、東京から岩手県大船渡市に集結し、当市のボランティアセンターを通じて、崎浜と越喜来の2ヶ所の側溝掃除をおこないました。

東京の上智大学1年生、たが健介(18)は、このボランティアに参加した感想を次のように語っています。

「今回の活動で学んだことは、何よりもボランティアで一人ひとりの絆が深まるということです。いかにボランティアを有意義に楽しくしていくか、それはお互いの信頼関係だと思います。このような素晴らしい環境があったから、またお互いに時間を楽しめて親睦を深めることができたのでしょう。今回の活動で改めて絆の深さとチーム内の交流の重要性を感じました」。

また、リーダーのひとりで、現在セイドー文化センターの寮長を勤めているアルベロ・エンリケ(35)は次のように語っています。

「東日本大震災のような天災が起きた時に、悲惨な状況にもかかわらず、人間の様々な素晴らしい側面が明らかになることがあると思います。例えば、私たちのグループの一人ひとりも、現地までの長い旅に高い交通費と多くの時間をかけて、全員が自分のできうる最善の貢献をしたことがその一つです。また、大雨の中、お年寄りの女性がわざわざお礼を言うためにいらしてくださるなど、被災地の方々が様々な形で感謝の気持ちを表してくださったことも忘れられません。さらに、この活動が実りあるものとなったのは、ボランティアで25人分の食事を作ってくださった方々や現地に行って働くことができないが協力はしたいと言って、寄付金や食料を寄付してくださる方のおかげでもあります。このように、人間の素晴らしさを私たちは肌で感じ、心から感謝することができた日々でした」。

この活動の動画を編集した京都大学院生の新谷光(24)は、それに加えてこう言っています。「ボランティア活動というのは、一般的にボランティアの人から被災地の方々への一方的な援助というイメージがあるのですが、このワークキャンプを通じて、そうではないことを僕自身がよく実感できました。むしろ僕たちが大船渡で多くの人にお世話になり、困難の中でも微笑みや気配り、朗らかさや暖かい人間関係を失わないことの重要性に改めて気付かせてもらいました。動画名を「私たちの一滴」としたのは、紹介しているマザーテレサの言葉「わたしたちのしていることは、大海の一滴に過ぎません」からヒントを得たからです。僕たちがいただいた大きな恩や愛と、それに対する僕たちのちっぽけな貢献の差を表したかったのです。それと、映像には、直接ボランティア作業とは関係ないように見える食事の風景や参加者の雑談、現地の人たちとの交流のシーンも入れました。そうすることで、ボランティアのような社会奉仕活動から得られる充実感と喜びがより明らかになるのではないかと思ったからです」。

参加者たちは「一生忘れられない夏休み」「最高の一週間」「また是非大船渡に行きたい」「大船渡の皆さんに対して十分に感謝し切れない」などと口々に言いながら、来る前より元気になってそれぞれの街に帰りました。東北地方の復興が一日も早く実現できるように心から祈りつつ……。