聖ホセマリアに出会った多くの人は、その愛情深さに強い印象を受けていました。ほんの短い間言葉を交わしただけであっても本当の関心をもって話を聞いてもらっているという印象や、それぞれの家族について質問する内容などからそう感じ取っていたようです。それは、彼が買い物に行ったときに対応してくれた店員や床屋のご主人も同じようなことを証言しています。
その溢れるような周りの人への愛情や配慮はどこから来ていたのかを示すエピソードが残っています。1954年のとある午後、ローマに勉強に来ていた学生たちとの団らんのひとときでの事です。聖ホセマリアを囲んで何人かが色々な話題について楽しく話をしていたましたが、ふと沈黙がよぎり、聖ホセマリアはしげしげと一人ひとりの顔を見ていました。その眼差しにはとても暖かな愛情が溢れていました。そして彼はつぶやくように言いました。「どうして私があなた達をこんなに愛しているかわかりますか?」沈黙が流れましたがそれはほんの数秒のことでした。「どうしてパドレはこんなに自分を愛してくれているのだろう?」そんなことを各自考えていました。そして聖ホセマリアは打ち明け話をするかのように言いました。「あなた方のうちに、キリストの血が流れているのを見るからですよ」。この言葉は聞いていた学生の心に力強く響いたそうです。
キリストは十字架の上で血を流して亡くなりました。それはすべての人を罪から贖うためでした。その現実を聖ホセマリアは周囲の人の姿に見ていたのでしょう。
