聖ホセマリアのエピソード(1)「私は封筒にすぎません」

創立者である聖ホセマリアの人柄を浮き彫にするエピソードをシリーズでお伝えします。

1970年代、教会は第二バチカン公会議後の混乱の時期を過ごしていました。聖ホセマリアはそれに危機感を持ち人々に正しい教会の教えを説く必要性を感じていました。そしてスペイン語圏の中南米とイベリア半島において司牧旅行を続けていました。そんな折の1975年2月4日、南米での司牧旅行を終えベネズエラの首都カラカスからスペインのマドリッドに向けて帰路につく飛行機の中での会話をドン・アルバロが思い出として語っています。「飛行機の中で私たち(ドン・アルバロと聖ホセマリア)の座席まである女性新聞記者がやってきました。彼女は、オプス・デイが自分にとって素晴らしい人生の助けとなってくれたことに感謝しており、何としても一言、聖ホセマリアに感謝を伝えたかったのです。オプス・デイのおかげでまず彼女はカトリックの洗礼を受け、その後、オプス・デイへの召し出しを受けたのです。聖ホセマリアは彼女にすぐに答えました。「私たちは皆、主に感謝しないといけないのですよ」。それでも彼女は個人的に何としても感謝の意を伝えたかったので、聖ホセマリアのおかげであることを強調していました。すると聖ホセマリアは愛情を込めつつもキッパリと話を遮りながら言いました。「私に感謝するのは違います。神様はあるメッセージを手紙にしたため、それを封筒に入れる。それが届いた人は、封を開け、手紙を取り出す。そして封筒はゴミ箱に捨てるのです」。聖ホセマリアはこうして、自分が神様のメッセージを運ぶ封筒にすぎないことを強調しました。彼は同じたとえをことあるごとに繰り返していました」。

硲恵介