<同じ羽を持った鳥たち>

大人数の兄弟たちがお互いに仲間意識をはぐくむようになるためには、あるスペイン人の家族の場合には、一つの「合言葉」が必要だったようです。ファビッチーオ アサンドリがローザ ピックさんと話を聞きました。

ローザ ピックとホセマリア ポスティーゴは15人の子供たちと一緒にバルセロナ近郊のサリアに住んでいます。

 

質問:「子どもたち全員がある時間、例えば夕食の時などに集まってあなたの話を聞くと言うことがありますか?」

―そうですね。みんなが集まるのは夕食の時位でしょうか。子どもたちは一緒に集まりほんとに楽しそうですよ。学校での出来事とか驚くような体験談などめいめいが話してくれますよ。

質問:「勉強時間や外出、公園へ遊びに行く等どうやってやりくりされているのですか?」

―我が家のやり方は、年上の子どもは年下の弟や妹のめんどうを見るということです。上の子はそれぞれが気にかけている妹や弟がいます。初めの頃は全くうまく行かなかったのですが、9歳のテレサがある時みんなの寝室のドアにメモ書きをテープで貼ったのがきっかけとなったのでした。<同じ羽を持った鳥は集まる>と書いてありました。そしてこれが我が家の合言葉になったのです。

質問:「ところで毎日の食事こしらえ、あるいは勉強でわからないことがあったとき教えるとかあるいは沢山の洗濯など、誰かが手助けしてくれているのでしょうか?」

―私は外に仕事を持っています。但し、半日勤務で昼食に家に戻り午後は子どもたちの世話をしています。午前中は学校があるので子どもたちは居ませんので。お手伝いさんを一人お願いしています。毎日来て掃除や、料理やその他の家事をやってくれます。洗濯機は普通サイズですが、毎日3回は動かしています。台所用品はどれも普通のものよりひとまわり大き目ですが、台所にいる時間はそんなに長くはなく、2〜3人の子どもの家庭とあまり変わらないと思います。大事なことは、なんでも無駄のないよう手順よくシンプルにすることです。

 

質問:「これだけの大所帯となると生活費も掛かることでしょう。経済的に余裕があるのですか?」

 

―主人と私の収入だけでやりくりしています。買い物はいつも一番安いスーパーマーケットで、ノーブランドの物を買っています。子どもたちもみな3段、4段ベッドで寝ています。これで満足してくれています。大切なことは、みんなが一緒に生活し、楽しい時間を過ごすことの幸せを感じているということでしょう。

 

質問:「多くの子どもたちのこまごまとした問題を気にかけ、一人ひとりの話を聞いてあげる・・・大変ハードなことではありませんか?」

―確かにそのためには、私たち自身がしっかりした考え方を持っていなければいけません。特に人生で何が一番大切かを伝えるときはなおさらです。善悪の区別、美徳そして良い習慣づけなどがそうです。そうすることによって信仰生活にも入っていけるのです。神さまの御前でお祈りをささげるとか毎日何か小さなことをささげる行為でも良いのです。私は黙想することで「いま最も必要なこと」に集中する力をもらっています。

一番大事なことは子どもたちの形成です。他のことは誰かに任せることができますし、実際そう努めています。私にとっては、埃ひとつない家が目標ではありません。すべてがパーフェクトでなくてもいいのです。

 

質問:「あなたの家では、静かな時間というものが一体あるのでしょうか?」

―娘の友達で、3人きょうだいで10歳になる子が家に来たとき、「自分の家より勉強がはかどるみたい」と私に告げたことには驚きました。

子どもたちは殆どは学校に行っているかあるいは庭で遊び廻っているわけですが、試験の時期が近づくと静かにして、図書館のように小声で話すことをわきまえているようです。廊下をバタバタ走ることもせず、勉強の時間を大切にしようとしています。

 

質問:「日中は家では通常どんな仕事が繰り返されているのでしょうか?」

―週日は、朝7時に家を出てミサに与かります。仕事は8時15分からです。子どもたちは全員学校に行きます。年上のものは年下のものが学校に行く準備が出来ているかどうかチェックします。そして午前中家事を手助けしてくれる婦人が来ます。

マイカーで仕事に行く時は、一人の男の子を乗せ2丁目先のパン屋さんの前で降ろします。彼は12斤のパンを買って家に戻ります。この仕事は子どもたちが7歳になるとやってもらいます。寝坊したり、やりたくないと思ったら全員が朝食抜きになるのです。こうして少しずつ責任感を学んでいくのではないでしょうか。

旅行などでお宅のお子さんたちは迷子になったりしないかと聞かれることがあります。ええ、あります。そんなことも考えて子どもたちには同じ服装をさせています。もし迷子になっても、誰にでもあの15人の子持ちのお母さんの子どもとすぐ判るためです。

 

質問:「沢山の子どもが欲しいと決めた理由は何ですか?」

―主人も私も大家族の中で育ったのです。主人の方は13人きょうだい、私は15人きょうだいでした。最初の子は、生まれた時医者から心臓に問題があるので3年は持たないと言われました。しかしその後の医療技術の進歩もありお医者さんたちはこの難病を克服することに成功し今娘は元気にしています。2番目の子どもも心臓疾患を抱えて生まれ、すぐに亡くなりました。

悲しいことに3番目の子どもにも同じことが起きてしまいました。多くの方がこれからも起きることだろうし、子作りはやめたほうがいいと助言してくれました。私自身はいつも、子どもはかけがえのない授かりものであり、神さまからの本当の贈りものであると考えています。だから生後すぐに亡くなっても落胆することはやめようと主人と決めたのです。どんな形にせよ子どもはすべて神の子であると思うのです。この世に生を享けることの方が全く存在しないことより素晴らしいのは当然です。

 

質問:「最近は、子どもは2人で充分だと言う若い夫婦が多いのですがどう思いますか?」

―それは彼等が育ってきた生活環境からくるものでしょう。

それが流行であったり、時には何も教えられていないという時代的状況が原因です。何が欠けているかが分かっていないだけです。

もし、彼らが子どもたちの本当の幸せを望むなら、きょうだいが多い方が一人ひとりの喜びがより一層大きくなるのは確実です。大家族ほど子どもたちがこれからの人生で学ぶであろうものの考え方とか価値観を植えつけてくれると思っています。幼い頃からきょうだい喧嘩を乗り切るすべを学んだり、チームワークで仕事をすることあるいはお互いに譲りあうことなどきっと一人っ子では出来ない数多くの体験をすることになります。今日では、いわゆる多国籍企業といえども一個人では支配できずチームを組んでやっているのと同じです。

このように若い頃からどうすれば仲良くやっていけるのか、小さないさかいがあってもどうやって仲直りし、一緒に仕事できるようになれるのかを体験することは、やがて成長して実社会で同じ体験をした場合は役に立つはずです。

実際のところ、担任の先生方によれば、私の子どもたちは仲間内ではリーダー的存在になっていること、また友達の家に良く出かけるのですが行く先々の家庭の異なった環境を受入れる順応性がきわめて速いと先方のお母さんたちから聞いたこともありました。我が家では何事もチーム単位で取り組んでいますので、クラスの友達を気遣うことも学んできているようです。自己中心的すぎる子もいないようです。

 

質問:「最後の質問ですが、あなたはこのような家族生活に満足していますか?」

―確かにいろいろと大変なことに見えることでしょう。しかし主人も私もそれほど大変だとは思っていないのです。私たちの家庭をいつも友人や近所の皆さんにオープンにしてお付き合いしたいと考えています。そのようなおつきあいこそ宝物だと思うからです。私が一番大切だと信じているのは、自分をご主人にすべて捧げなさいということです。その愛の実りがたくさんの子どもたちです。

そしてその子どもたちがまた多くの友達を作り、家に連れてくることになるのです。

こうして私たちの周りには、それぞれが他の人のために何かをしようと努力し、利己心と戦うという健全な環境が創られるのです。

大家族にあっては、自分自身の時間は殆どありません。しかし本当の幸せとは誰かに何かを求めるのではなく、むしろ誰かのために奉仕することであることを結局は実感できると思います。